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血を血で洗う報いの先に(タイタス・アンドロニカス) [演劇]

■タイタス・アンドロニカス
会期:2006.4.21-5.7
会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
演出:蜷川幸雄
原作:W・シェイクスピア
翻訳:松岡和子
出演:吉田鋼太郎、麻実れい、小栗旬、真中瞳、壤晴彦、鶴見辰吾、他
http://www.saf.or.jp/performance/geijyutu/05_45.html
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□story
古代ローマ武将タイタス・アンドロニカス(吉田)はゴート族との戦いに勝利し戻ってきたが、この戦いで失った息子たちへの弔いとして捕虜であるゴート人の女王タモーラ(麻実)の長男を殺す。
一転ローマ皇帝皇后となるタモーラだが、タイタズ一族への報復として、愛人のムーア人エアロン(小栗)と共謀。
その息子たちによりタイタスの娘ラヴィニア(真中)を強姦し、口封じのためその舌と両腕を切断してしまう。
ー血を血で洗う報いの先に残ったものは…

□impressions
ついに観劇!!!
前夜より待ちに待って!

シェイクスピア全作品中、最も残虐で猥雑といわれる悲劇。

舞台は光り輝く程に真っ白。
ふと目をやる先には大きなオオカミ像。
血はたなびく赤い糸で表現され、
陰惨とは裏腹に洗練された美しさを印象付けられます。
幻想的に感じる一方、ローマの血生臭さがありありと彷佛させられ、
現実の傍観者としてえぐられる緊張が続きました。

復讐劇の発端は戦争。
殺人行為は一見淡々と展開するかのよう。
ただその行為の裏にある親族への愛情が見えれば見えるほどに、普遍的な概念で否定することができなくなってきます。(賛否ありそうですがあくまで個人として。)

タイタスは父親として息子、娘のために。
タモーラは母親として息子のために。

そして、悪事で身を固めていたエアロンに子供が生まれ、息子のために。
上へ上へと上り詰めようとするその計算高さは逸脱し、人間性を欠いていたと思われるエアロン、最後はそこに新たな感情が見え隠れしたところに何らかの希望を感じさせられました。

最終的にこれらを現在社会に置き換えての言及は難しいのですが、作品としてのテーマ満載で身に触れて楽しめる舞台でした。

その他、道徳的なことは抜きにして登場人物の人間性の見える演技を観せる役者の技量に心打たれたのは真実としてあります。

吉田さんのタイタスはとにかく何もかもが大きい、
麻実さんのタモーラは母と女の両面性が魅惑、
小栗くんのエアロンは悪意に満ちた眼力に圧倒。

今回作品でおそらく誰もが注目したであろう、
小栗旬!!!
舞台上での存在には、
その役作りには、

驚きでした。

今後の作品でも期待度【大】の気になる役者です。


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オリュンポスの頂きにおわします [演劇]

ピン!ときていただける人がいると嬉しいのですが、
夢の遊眠社“二万七千光年の旅”の冒頭部分。

「オリュンポスの頂きにおわしますゼウスのかみさんにも
 そう見えるかなあ?」

ギリシャ神話に纏る、
大好きな台詞。

さらにここで、ピピン!ときてくださる方がいることを
期待しながらも…。

本題です。

思い立って今日は
蜷川さんの『オイディプス王』アテネ公演のDVDを観ました。

TBSの「世界遺産」並に高低のあるカメラワークで
劇場とはまた異なる新鮮味!!

これが何とも、古代ギリシャ円形劇場のヘロデス・アティコスでの公演を完全収録しているのです。

王の声が高らかに届くその先には
神々のおわしますオリュンポスが存在し、
神に従順する人間の様子が観てとれるわけで

ふと、神話が現実として目に見える瞬間がたまらなく
気持ちがよかったです。

ますます、タイタス・アンドロニカスへの期待高まる
今日この頃。

オイディプス王 アテネ公演

オイディプス王 アテネ公演

  • 出版社/メーカー: 角川エンタテインメント
  • 発売日: 2005/02/25
  • メディア: DVD


二万七千光年の旅

二万七千光年の旅

  • 作者: 野田 秀樹
  • 出版社/メーカー: 而立書房
  • 発売日: 1981/01
  • メディア: 単行本


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テアトル・ガラシfrom Indonesia [演劇]

■ワクトゥバトゥ〜百代の過客〜
テアトル・ガラシfrom Indonesia
場所:森下スタジオ
会期:2006年4月21日[金]—24日[月]
http://www.kunauka.or.jp/
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現代インドネシアの前衛劇団、テアトル・ガラシの
『ワクトゥバトゥ』を観に行ってきました。

作品は身体表現、叙情詩的言語表現、日常的な所作、音楽による情景描写、ビデオ映像を交え一種のコラージュ形式をとっていて、終始リズム良く展開します。

また、女性の役者さんの堂々たる姿は
観ていてとても気持ちがよかったです。
足を開き凛と佇む姿勢よりゆっくり動く腕の曲がりからは
生命の湧く音をも聞かせてくれるような感覚を
感じとることができるのです。

時間が交錯する点、また言語が異なることもあってか、
観ている自分がこちらの世界へポンと放り出されたような
不思議な印象を受けました。

会期が短いので早く行ってみて〜!
としか紹介できないのが残念ですが。。。
かなりオススメ作。

6月11日からはガラシ×ク・ナウカの合同講演もありますので、ぜひぜひ。


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PARCO歌舞伎「決闘!高田馬場」 [演劇]

■PARCO歌舞伎「決闘!高田馬場」
作・演出:三谷幸喜
出演:市川染五郎、市川亀治郎、中村勘太郎、市川高麗蔵、松本錦吾、澤村宗之助、市村萬次郎 他
会場:PARCO劇場
会期:2006.3.2-3.26
http://www.parco-play.com/web/play/kabuki/
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□story
1694年(元禄7年)2月11日。
決闘の策略にはまったおじの菅野六郎左衛門を救うため
飲んだくれ浪人・中山安兵衛(市川染五郎)が決闘場所に駆けつけ、助太刀した一件。
決闘場所までひた走る安兵衛の姿が名場面。

□impressions
やっと観て参りました〜。PARCO歌舞伎。

!!!!!!!!!!!!!

よい舞台を観た後は自然と心が弾む〜〜
後腐れなく楽しくて、心身高揚するばかり。

定式幕(*1)はなく、目下には回り舞台が見えるのみ。
舞台セットもなく、青みのライティングが映える。
これから始まる何かを彷佛させるには足りないけれども、
PARCO劇場という小さなキャパシティの中で感ずるには十分すぎるほど五感に沁み入る演出。
長唄(*2)の軽やかな音色は、
シンバルも混ざっちゃうか!?といった感じにノリよく、
ロックに属するといえば属しちゃうほど。

この回り舞台とブレヒト幕(*3)を駆使する舞台展開はとにかく早い!
かつての安兵衛回想シーンの演出はまさにその極み。
中央に立つ安兵衛と回転する長屋。
長屋を円形にすることで際限なく繋がるストーリーには圧巻。

キャラ設定も明確で、なぜか自然に感情移入してしまう。
三谷さんの舞台の醍醐味はやはりここにあり。。。
染五郎さん演ずる安兵衛の、男気あふれる駄目っぷり
はなぜが愛おしく感じてしまうし。
勘太郎さん演ずる又八とのからみは、キャラが際立っておもしろい。
おウメばあさんの存在も一躍買っていた気がする。

とにかく、スピードやリズム感がとても楽しい舞台。

カーテンコール時は、大喝采のスタンディングオーベイション。
役者さんにとどけ〜〜とばかりに
私、N列から立ちましたから!!!

ここ日本の千秋楽以外の舞台でスタンディングオーベイションを経験したのは実は初めて。

これほどまでに人々に鮮烈な印象を与えるって、やはりすごい!

たのしい舞台をありがとう!!!!!
心より。

【用語補足】
(*1)定式幕…歌舞伎に使われる縦縞模様の引き幕。
   私はこれを見るといつも永◯園のお茶漬けを連想しちゃいますが。
(*2)長唄…歌舞伎を代表する三味線音楽。
   今回の舞台では正面高くに位置し客席から見える構成。
(*3)ブレヒト幕…舞台を横切るように渡したワイヤーに柔らかい布を掛けた幕。


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シベリア少女鉄道vol.15「ここでキスして。」 [演劇]

■シベリア少女鉄道vol.15「ここでキスして。」
作・演出:土屋亮一
出演:前畑陽平 藤原幹雄 横溝茂雄 吉田友則 篠塚茜 出来恵美 内田慈
会場:紀伊國屋サザンシアター
会期:2006.3.1-3.5
http://www.siberia.jp/
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職場のEさんの紹介+演劇ぶっく2月号に掲載のあったことで
知った劇団、シベリア少女鉄道、初観劇。

舞台は、2階建ての旅館。
かなり作り込んである。
ちょうど2段のホールケーキを包丁で切ったときに
いちごなどが半分に切られているのが鮮明に映えることに
似た感覚。

客層、いままでの小劇場系のお芝居と異なり、
年配層は高そう。50代くらいの客もちらほら。

なんだろ〜。なんだろ〜。

役者、全員素人臭い。これは演出であろうか?
(たぶん演出。後半部のシステマチックな展開ではこの
素人っぽさが展開の先読みをさせないもののように感じる)

最初のシチュエーションは、
ドリフかぃ!?
はたまた吉本かぃ!?
もっといえば、渡る世間は鬼ばかりかよ〜〜!!!!
と思わせられる。

ストーリーが「うそ」から交錯し、
その交錯が後半部空間にまで及んでくる。
舞台上では台詞を話すがその話しかける相手が違っていたり、
寝る姿が立ちの姿と逆転してしまったり。

それは、何かのゲームで一部のパーツを間違え、
そのズレを埋めるためにつぎはぎするかのごとく。
テトリスの感覚・・・だろうか?

舞台構造が空間的且つ理系的。

演出の土屋亮一さんに関しては、
とても演出力に長ける方なのだなという印象を持った。
キャラ設定が明確であるにもかかわらず、
役者そのものの味は際立って出てこない。
適材適所にぴたりと役者がはまっていて、それがストーリーの1パーツとして見える。
こんな感覚で人を観たこと、なかったな。
それが新しい発見。

だがやはり、役者の表現の上手さや言葉尻の美しさに面白みを感じることの多い自分にとって、
趣味思考という観点からはしっくりこない不思議な感覚。
おもしろいけど、おもしろさの塊が食道ではなくて
気管支に入って苦しい。。。
このもどかしさをうまく言及できません。

この舞台を続けて観ている人の感想をぜひぜひ聞きたいところ。


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「労働者M」期待の初日★ [演劇]

■労働者M
演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:堤 真一  小泉今日子  松尾スズキ  秋山菜津子  
   犬山イヌコ  田中哲司  明星真由美  貫地谷しほり  
池田鉄洋  今奈良孝行  篠塚祥司  山崎 一
美術:中越司
音楽:伊藤ヨタロウ
公演日程:2006年2月5日(日)〜28日(火)
会場:Bunkamuraシアターコクーン
   2階席にて観劇
http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/event/kera/
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行ってきました!
労働者M、初日!!!

少々ネタバレのお話で恐縮ですが…

◆近未来の収容所
自由と引き換えに、食料と安全な寝場所が提供される
(いかにも演劇的なトーン)

◆現代のある事務所
自殺志願者の悩みを聞いては布団や宝石を売りつける
(細々とした日常的なトーン)

この全く異なる2つの世界でひたすら人間の心理が交錯する話。

ただ、共通しているのは、どちらの世界でも1番偉い人の姿は虚像でしかないこと。

そして、理想を掲げて行動するも何もなし得ない人間と、
くだらない問題に向き合うも、結果的に大きな事件を引き起こしてしまう人間の対比が見どころ。

舞台は中央回転型で、回転する円は3つに分けられ、
それぞれの空間の端に扉を設けています。
→「事務所のようなところ」→「喫茶店のような…」→「寝床(2段ベッドが左右に)」→と左右に回転しながらストーリーが展開?
というか、交錯。のほうが正しい気がする。
上手下手には大きな階段のセット、それを架け渡す橋のような装置が舞台上部にあり、2階席からの丁度目線の位置にこの橋が存在。
その橋の奥には大きな岩石のセットがあり、ライティングにより赤や緑に変色。

1階客席間には2本、歌舞伎の花道に通ずる通路あり。

あ〜〜、1階で観ていたらもっと違った目で観れたなあと
一番強く思った演出。

その他、演出に関しては、これは2階席が正解だと感じるところが多い。と言うのは、映像やライティングに映画的な演出を駆使しているところが多く、それを舞台の人間模様と対比しながら観ることができる。

これは近距離じゃわかんないかも。

しかし、、、

やっぱり、
ほんとうに!!!!!!!

このお芝居はとにかくキャストが豪華!
役者さん同士がどう絡むんだろうということ事体がもう
芝居の見どころみたいになっちゃって
笑いに関して言えば、正直すべて役者にかかっていたような印象。

堤さんはね、二枚目なんだけど垣間見えるダメ男っぷりな演技にドキッ♪
しかも初日だからか、台詞カミカミだよ!
おいッ!!!ってツッコミたくなるほどにカミっぷりが最終的に板に付いてくるほどで、それはそれでイイ♪

松尾スズキさんは、期待通りソフトにおかしい!でももっと独特な間、を観たかった!!残念!

そんなこんなの初日でしたので、
私自身、このお芝居のとどのつまりは…何!?という感想で
自然と見える結論やラストはわからず、

最後・・・

わはははははっ。

(暗転)

(緑色ライティング)

あれぇ、もうカーテンコール!?

終止、まとめきれず、不親切な感想でごめんなさい。

そんなお芝居もあるのです。ということで、また少し回想しながら結論じみた何かを模索してみます。

ではでは。


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NODA・MAP第11回公演「贋作・罪と罰」 [演劇]

■NODA・MAP第11回公演 「贋作・罪と罰」
脚演:野田秀樹
出演:松たか子・古田新太・段田安則・宇梶剛士・美波・野田秀樹・マギー・右近健一・小松和重・村岡希美・中村まこと・進藤健太郎
会場:Bunkamuraシアターコクーン
   G列センターブロックにて観劇
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□story
ロシアの文豪ドストエフスキーの名作「罪と罰」を野田秀樹氏によって戯曲化された作品。
『人間はすべて凡人と非凡人との二つの範疇に分かたれ、
非凡人はその行動によって歴史に新しい時代をもたらす。
そして、それによって人類の幸福に貢献するのだから、
既成の道徳法律を踏み越える権利がある。』
その思想に突き動かされ、女主人公英(はなぶさ)が殺人を犯す…

□impressions
ご縁あって12月6日初演を観劇し、
今週26日に2回目の観劇に行ってきます。
(kenken。さんありがとうございます)
興奮冷めやらないうちに感想残しておきます。
台詞に追い付けた分、舞台からもらった泣き・笑いの感情をひしひしと噛み締めています。
今回改めて感じたことは、光の扱いが効果的であること。
物語の展開とそれとが関係してうまく結び付けられることで
日常において遠い位置付けにあるものが
現実として体感できました。
プロローグに少ししか登場しないおつば(村岡希美さん)が
詩を読むシーンにはこれから起こりうる変化の予兆が感じとれ、
精神が喚起される気がしました。
今回一番響いた台詞回しの一つです。
“覆された宝石のような朝、
 何人(なんびと)か戸口にて誰かとささやく、
 それは神の生誕の日”
最終場面でも英(松たか子さん)も自分の犯した罪を鎮静する意としてこの詩を唱えます。
日替わりネタは…
■マギーさん:
ワカメを噛んでいるんだ。増えるワカメを口の中でふやしているんだ。
■才谷(古田さん):英少しは笑えのシーン
チャーンチャカチャカチャカ〜♪腕を横に〜&%*体操で〜す。ラジオ体操のテーマ曲を歌い、最後にポーズ。
■清・智:ソファーでテレビを観ながら一言のシーン
野田さんがシュッシュッとデューク更家のウォーキングを始める。
カーテンコールは
全員並びで3回でしたが、確か初演の際は全員で3回に
野田さん1人で1回の計4回あったような気がするのですが??
ちょっと残念。ただ、最後の3回目に才谷と英が肩を組んでジャンプまじりにはけていく様はとっても心が温まりました。


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